わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)



わが半生―「満州国」皇帝の自伝〈下〉 (ちくま文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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無価値と文化財の境界

この本を評価するのは難しい。溥儀のわが半生は、彼自身の性格や、満州国の存在と同じく、様ざまな面を抱えていて、一筋縄では理解できない。溥儀は変わり身の早い男だった(参考:東京裁判の溥儀証言)。自分の地位と生命を守るためには平気で嘘をついた男である。この性分については存命の身内からも、たびたび苦言が飛び出している。つまり彼の自伝であるこの書籍も、所詮は中国共産党の支配下で書かれ(ることが許され)たものであり、その差分を差し引いて読まなければならないのだ。世界を揺るがした彼の自叙伝だけに、彼の率直な意見が聴きたいところだったが、現代ではすでにそれも叶わない。彼自身の筆が綴ったこの書籍は、とても重要な文化財的意義を持っているように感じるが、反面、彼の“言い逃れ”証言によって、その後の同時代に対する歴史研究の際、罪を被った人や、いわれのない先入観を押し付けられてしまった人がいた(そしてそのほとんどが未だ論争の中にいる)のも事実である。いわばこの書籍は無価値と文化財の狭間を揺れ動いているのである。
イデオロギーではなく率直な感動を読もう

清国及び滿洲國の亡国主・溥儀の自叙伝。20世紀初頭の宮廷事情そして市井の人間から窺い知れない皇帝溥儀の不満を知るうえで非常に参考になる。もっとも、この書が中華人民共和国において書かれたものであるため、中国大陸をさんざん蚕食した欧米列強や日本・中華民国における各軍閥についての記述はある程度割り引いて読む必要がある。

本は分冊になるうえ1冊がかなり厚いので、中国に興味のない人・内容をかいつまみたい人にはあまりお勧めしない。よって星2つ減。高校世界史の基礎的知識を得るか、映画『ラスト=エンペラー』などを参照したうえで読む方が良い。

圧巻はこの本の終章。中華人民共和国成立後、思想教育を経た彼は皇帝から市井の人間として生まれ変わることが出来たと感動する。このよろこびが文字と文字の間からこぼれんばかりなのである。この率直な感動を読もう。



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